なぜ座標系・測地系が重要なのか
GISでは、道路、河川、建物、行政界、標高メッシュ、航空写真など、さまざまなデータを地図上に重ねて扱います。しかし、それぞれのデータが異なる座標系・測地系で作られていると、見た目は重なっているように見えても、解析結果がずれたり、距離・面積・標高との関係を誤って評価したりすることがあります。
同じ場所でも、緯度経度で表す場合と、平面上のX・Y座標で表す場合があります。どちらも正しい表現ですが、用途が違います。
GISで最も重要な「位置の基準」を、地理座標系、投影座標系、日本の測地系、平面直角座標系、EPSGコード、Webメルカトルまで実務目線で整理します。
GISでは、道路、河川、建物、行政界、標高メッシュ、航空写真など、さまざまなデータを地図上に重ねて扱います。しかし、それぞれのデータが異なる座標系・測地系で作られていると、見た目は重なっているように見えても、解析結果がずれたり、距離・面積・標高との関係を誤って評価したりすることがあります。
同じ場所でも、緯度経度で表す場合と、平面上のX・Y座標で表す場合があります。どちらも正しい表現ですが、用途が違います。
座標系の説明では似た言葉が多く出てきます。最初は、次の4つを分けて理解すると整理しやすくなります。
| 用語 | 意味 | 例 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|
| CRS 座標参照系 | 位置を表すための総合的な定義。測地系、楕円体、投影法、単位、座標軸などを含みます。 | EPSG:4326、EPSG:6668、EPSG:6677、EPSG:3857 | GISソフトでは「レイヤのCRS」「プロジェクトCRS」として表示されます。 |
| 測地系 Datum | 地球上の位置を測るための基準。地球の形、原点、方位などの基準を定めます。 | 日本測地系、JGD2000、JGD2011、WGS84 | 古い紙図面や旧データでは日本測地系が残る場合があります。 |
| 楕円体 Ellipsoid | 地球を数学的に近似した回転楕円体です。 | GRS80、WGS84楕円体 | 測地系の土台になります。通常はEPSGコードを指定すれば内部的に定義されます。 |
| 投影法 Projection | 地球上の曲面座標を、平面の地図座標へ変換する方法です。 | 横メルカトル図法、Webメルカトル、UTM | 投影法により、距離・面積・角度・形のどれかに歪みが出ます。 |
GISで最初に理解すべき大きな区分が、地理座標系と投影座標系です。
地球上の位置を緯度・経度という角度で表します。単位は度です。GPS、GeoJSON、Web地図APIの入力、広域データの配布でよく使われます。
代表例:WGS84(EPSG:4326)、JGD2011(EPSG:6668)
地球上の位置を平面に投影し、X・YまたはEasting・Northingのメートル座標で表します。距離、面積、バッファ、河川・砂防・都市計画などの実務解析に向きます。
代表例:JGD2011 平面直角座標系、UTM、Webメルカトル
| 比較項目 | 地理座標系 | 投影座標系 |
|---|---|---|
| 座標値 | 緯度・経度 | X・Y、Easting・Northing |
| 単位 | 度 | メートルなど |
| 向いている用途 | 位置の保存、Web API、広域データ交換 | 距離・面積・バッファ・土木設計・水文解析 |
| 注意点 | 度のまま距離や面積を計算しない | 対象地域に合う投影帯・系番号を選ぶ |
日本国内のGIS実務では、データの作成年代により測地系が異なる場合があります。新しい国土数値情報、基盤地図情報、公共測量成果、自治体データでは、JGD2011またはJGD2000がよく使われます。一方、古い図面や古いシェープファイルでは、旧日本測地系が残っていることがあります。
| 区分 | 概要 | よく出る表記 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 日本測地系 Tokyo Datum | 古い日本の測地系です。 | Tokyo、Tokyo Datum、日本測地系 | 現在の世界測地系データと重ねると、地域により数百m程度ずれることがあります。変換が必要です。 |
| 日本測地系2000 JGD2000 | 世界測地系に基づく日本の測地系です。 | JGD2000、EPSG:4612 | 古めの公共データで使われていることがあります。 |
| 日本測地系2011 JGD2011 | 2011年東北地方太平洋沖地震後の測地成果改定に対応した測地系です。 | JGD2011、EPSG:6668 | 現在の日本国内GISでは基本的にこちらを優先して確認します。 |
| WGS84 | GPSや世界規模のWeb地図で広く使われる測地系です。 | WGS 84、EPSG:4326 | Web地図・GPS・GeoJSONでよく使います。日本の公共測量成果とは厳密には同じ扱いではありません。 |
「JGD2011の緯度経度」はEPSG:6668、「WGS84の緯度経度」はEPSG:4326です。両者は実用上ほぼ重なる場面もありますが、公共測量や高精度な土木・防災GISでは、データの出典に合わせてCRSを明確に指定します。
JGD2011は、現在の日本国内データでよく使われる測地系です。GIS実務では、まず緯度経度の EPSG:6668、 平面直角座標系の EPSG:6669〜6687、UTM座標系の EPSG:6688〜6692 を覚えておくと、QGIS、PostGIS、GDAL、WebGIS連携で迷いにくくなります。
| 分類 | EPSG | 名称 | 座標の単位 | 主な用途 | リンク |
|---|---|---|---|---|---|
| 地理座標系 | 6668 | JGD2011 | 度 | 日本国内データの緯度・経度、データ配布、広域データ管理 | EPSG.io |
| 平面直角座標系 | 6669〜6687 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS I〜XIX | メートル | 公共測量、都市計画、河川・砂防、防災GIS、距離・面積・バッファ解析 | 一覧表へ |
| UTM座標系 | 6688 | JGD2011 / UTM zone 51N | メートル | 日本西端側・広域データ、衛星画像、ラスタデータ処理 | EPSG.io |
| UTM座標系 | 6689 | JGD2011 / UTM zone 52N | メートル | 九州・中国地方周辺など、UTM 52Nに入る広域データ | EPSG.io |
| UTM座標系 | 6690 | JGD2011 / UTM zone 53N | メートル | 近畿・中部地方周辺など、UTM 53Nに入る広域データ | EPSG.io |
| UTM座標系 | 6691 | JGD2011 / UTM zone 54N | メートル | 関東・東北・北海道南部周辺など、UTM 54Nに入る広域データ | EPSG.io |
| UTM座標系 | 6692 | JGD2011 / UTM zone 55N | メートル | 北海道東部・日本東端側など、UTM 55Nに入る広域データ | EPSG.io |
平面直角座標系は、日本国内の大縮尺地図、公共測量、土木設計、都市計画、河川・砂防・防災GISなどでよく使われるメートル単位の投影座標系です。日本全国を19の区域に分け、各区域ごとに原点となる緯度・経度を定めています。
日本の平面直角座標系は、公共測量や土木・防災GISで使いやすいように、日本全国を19の区域に分けた投影座標系です。JGD2011ではI系〜XIX系に EPSG:6669〜6687 が割り当てられています。
| 系番号 | JGD2011 EPSG | 座標系名 | 原点経度 | 原点緯度 | 主な対象地域・メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| I | EPSG:6669 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS I | 129°30′E | 33°00′N | 長崎県、鹿児島県の一部離島など。九州西側・南西諸島の一部。 |
| II | EPSG:6670 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS II | 131°00′E | 33°00′N | 福岡、佐賀、熊本、大分、宮崎、鹿児島の多く。九州本土側でよく使います。 |
| III | EPSG:6671 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS III | 132°10′E | 36°00′N | 山口、島根、広島。中国地方西部。 |
| IV | EPSG:6672 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS IV | 133°30′E | 33°00′N | 香川、愛媛、徳島、高知。四国。 |
| V | EPSG:6673 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS V | 134°20′E | 36°00′N | 兵庫、鳥取、岡山。中国地方東部・兵庫。 |
| VI | EPSG:6674 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VI | 136°00′E | 36°00′N | 京都、大阪、福井、滋賀、三重、奈良、和歌山。近畿周辺。 |
| VII | EPSG:6675 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VII | 137°10′E | 36°00′N | 石川、富山、岐阜、愛知。北陸・中部の一部。 |
| VIII | EPSG:6676 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VIII | 138°30′E | 36°00′N | 新潟、長野、山梨、静岡。中部東側。 |
| IX | EPSG:6677 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS IX | 139°50′E | 36°00′N | 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、福島など。関東・首都圏で最重要。 |
| X | EPSG:6678 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS X | 140°50′E | 40°00′N | 青森、秋田、山形、岩手、宮城。IX系と取り違えないよう注意。 |
| XI | EPSG:6679 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XI | 140°15′E | 44°00′N | 北海道西部、渡島・檜山・後志など。北海道はXI〜XIIIに分かれます。 |
| XII | EPSG:6680 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XII | 142°15′E | 44°00′N | 北海道中央部など。北海道の広い範囲で使います。 |
| XIII | EPSG:6681 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XIII | 144°15′E | 44°00′N | 北海道東部、十勝、釧路、根室など。 |
| XIV | EPSG:6682 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XIV | 142°00′E | 26°00′N | 小笠原諸島の一部。東京都島しょ部。 |
| XV | EPSG:6683 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XV | 127°30′E | 26°00′N | 沖縄本島、久米島、慶良間列島など。沖縄本島周辺。 |
| XVI | EPSG:6684 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XVI | 124°00′E | 26°00′N | 宮古、石垣、西表、与那国など。先島諸島。 |
| XVII | EPSG:6685 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XVII | 131°00′E | 26°00′N | 北大東島、南大東島。大東諸島。 |
| XVIII | EPSG:6686 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XVIII | 136°00′E | 20°00′N | 沖ノ鳥島。特殊な島しょ区域。 |
| XIX | EPSG:6687 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XIX | 154°00′E | 26°00′N | 南鳥島。特殊な島しょ区域。 |
EPSGコードは、座標参照系を識別するための番号です。GISソフトやWebGIS、PostGIS、GeoServer、GDAL、PROJなどでは、座標系名を長く書く代わりに EPSG:4326 のようなコードで指定できます。
EPSG Geodetic Parameter Datasetの公式サイト。CRS、測地系、座標変換などの正式情報を確認します。
Registry IOGP GeorepositoryEPSG Datasetの検索・閲覧サイト。公式データセットに基づくCRS定義を確認できます。
検索しやすい EPSG.ioEPSGコードを素早く検索し、WKT、Proj4、bbox、Web地図上の範囲を確認しやすいサイトです。
| EPSG | 名称 | 種類 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 4326 | WGS 84 | 地理座標系 | GPS、GeoJSON、Web API、Leaflet入力 | 単位は度。距離・面積解析には直接使わない。 |
| 3857 | WGS 84 / Pseudo-Mercator | 投影座標系 | Google Maps、OpenStreetMap、地図タイル、WebGIS表示 | 表示用に便利だが、精密な面積・距離解析には注意。 |
| 6668 | JGD2011 | 地理座標系 | 日本国内データの緯度経度 | 公共測量・基盤地図情報などで重要。 |
| 6669〜6687 | JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS I〜XIX | 投影座標系 | 日本国内の距離・面積・土木GIS解析 | 対象地域に合う系番号を選ぶ。 |
| 4612 | JGD2000 | 地理座標系 | 少し古い日本国内データ | JGD2011へ合わせるか、出典に応じて管理する。 |
QGISでレイヤのCRSを設定・変換するときは、検索欄に 6677 や JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS IX のように入力すると見つけやすくなります。
# GDAL / ogr2ogr でWGS84緯度経度からJGD2011 平面直角IX系へ変換する例
ogr2ogr -t_srs EPSG:6677 output_jgd2011_zone9.gpkg input_wgs84.geojson
# Python / pyproj でCRSを確認する例
from pyproj import CRS
crs = CRS.from_epsg(6677)
print(crs.name)
print(crs.axis_info) Google Maps、OpenStreetMap、Leaflet、OpenLayers、MapLibre GLなどのWeb地図では、背景地図タイルの表示にWebメルカトル(EPSG:3857)が広く使われます。画面上で世界中を同じタイル方式で高速に表示できるため、WebGISに向いています。
GeoJSONやWeb APIでは、経度・緯度のWGS84(EPSG:4326)でデータを扱うことが多いです。Leafletでもマーカー指定は緯度・経度を使うのが基本です。
Web地図タイルは、ズームレベル、X、Yのタイル番号で分割され、内部的にはWebメルカトル座標に基づいて描画されます。
| 用途 | おすすめCRS | 理由 |
|---|---|---|
| Leafletで点・線・面を表示 | EPSG:4326のGeoJSON | Web APIやGeoJSONとの相性がよい。Leaflet側で背景地図に合わせて表示されます。 |
| 背景地図タイル | EPSG:3857 | 標準的なWeb地図タイルの座標系です。 |
| 距離・面積・バッファ解析 | 地域に合う投影座標系 | 日本ならJGD2011 平面直角座標系など。3857で精密な面積解析は避けます。 |
| 国内業務成果の保存 | JGD2011系 | 公共測量・自治体・土木GISとの整合を取りやすい。 |
旧日本測地系とJGD2000/JGD2011/WGS84の混在を疑います。CRSの「定義」と「変換」を混同しないようにします。
緯度経度のまま解析している可能性があります。距離・面積・バッファは、対象地域に合うメートル単位の投影座標系へ変換してから実行します。
オンザフライ変換により画面上だけ重なっている場合があります。解析・納品用には、データそのものを同じCRSへ再投影して保存します。
IX系とX系の取り違えです。関東・神奈川・東京本土は通常IX系 EPSG:6677、宮城・岩手・青森などはX系 EPSG:6678です。