Chapter 03 / CRS・Datum・Projection

座標系・測地系を詳しく学ぶ

GISで最も重要な「位置の基準」を、地理座標系、投影座標系、日本の測地系、平面直角座標系、EPSGコード、Webメルカトルまで実務目線で整理します。

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なぜ座標系・測地系が重要なのか

GISでは、道路、河川、建物、行政界、標高メッシュ、航空写真など、さまざまなデータを地図上に重ねて扱います。しかし、それぞれのデータが異なる座標系・測地系で作られていると、見た目は重なっているように見えても、解析結果がずれたり、距離・面積・標高との関係を誤って評価したりすることがあります。

実務での基本:GISで解析する前に、必ず「このデータはどのCRSか」「緯度経度なのか、メートル座標なのか」「日本測地系・JGD2000・JGD2011・WGS84のどれか」を確認します。
地理座標系と投影座標系の概念

同じ場所でも、緯度経度で表す場合と、平面上のX・Y座標で表す場合があります。どちらも正しい表現ですが、用途が違います。

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まず押さえる用語:CRS・測地系・楕円体・投影法

座標系の説明では似た言葉が多く出てきます。最初は、次の4つを分けて理解すると整理しやすくなります。

用語意味実務上の注意
CRS
座標参照系
位置を表すための総合的な定義。測地系、楕円体、投影法、単位、座標軸などを含みます。EPSG:4326、EPSG:6668、EPSG:6677、EPSG:3857GISソフトでは「レイヤのCRS」「プロジェクトCRS」として表示されます。
測地系
Datum
地球上の位置を測るための基準。地球の形、原点、方位などの基準を定めます。日本測地系、JGD2000、JGD2011、WGS84古い紙図面や旧データでは日本測地系が残る場合があります。
楕円体
Ellipsoid
地球を数学的に近似した回転楕円体です。GRS80、WGS84楕円体測地系の土台になります。通常はEPSGコードを指定すれば内部的に定義されます。
投影法
Projection
地球上の曲面座標を、平面の地図座標へ変換する方法です。横メルカトル図法、Webメルカトル、UTM投影法により、距離・面積・角度・形のどれかに歪みが出ます。
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地理座標系と投影座標系

GISで最初に理解すべき大きな区分が、地理座標系投影座標系です。

地理座標系 Geographic CRS

地球上の位置を緯度・経度という角度で表します。単位は度です。GPS、GeoJSON、Web地図APIの入力、広域データの配布でよく使われます。

代表例:WGS84(EPSG:4326)、JGD2011(EPSG:6668)

投影座標系 Projected CRS

地球上の位置を平面に投影し、X・YまたはEasting・Northingのメートル座標で表します。距離、面積、バッファ、河川・砂防・都市計画などの実務解析に向きます。

代表例:JGD2011 平面直角座標系、UTM、Webメルカトル

比較項目地理座標系投影座標系
座標値緯度・経度X・Y、Easting・Northing
単位メートルなど
向いている用途位置の保存、Web API、広域データ交換距離・面積・バッファ・土木設計・水文解析
注意点度のまま距離や面積を計算しない対象地域に合う投影帯・系番号を選ぶ
覚え方:「緯度経度は場所を示す住所のようなもの」「投影座標系は実測・解析しやすい平面図面の座標」と考えると分かりやすいです。
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日本の測地系:日本測地系、JGD2000、JGD2011

日本国内のGIS実務では、データの作成年代により測地系が異なる場合があります。新しい国土数値情報、基盤地図情報、公共測量成果、自治体データでは、JGD2011またはJGD2000がよく使われます。一方、古い図面や古いシェープファイルでは、旧日本測地系が残っていることがあります。

区分概要よく出る表記注意点
日本測地系
Tokyo Datum
古い日本の測地系です。Tokyo、Tokyo Datum、日本測地系現在の世界測地系データと重ねると、地域により数百m程度ずれることがあります。変換が必要です。
日本測地系2000
JGD2000
世界測地系に基づく日本の測地系です。JGD2000、EPSG:4612古めの公共データで使われていることがあります。
日本測地系2011
JGD2011
2011年東北地方太平洋沖地震後の測地成果改定に対応した測地系です。JGD2011、EPSG:6668現在の日本国内GISでは基本的にこちらを優先して確認します。
WGS84GPSや世界規模のWeb地図で広く使われる測地系です。WGS 84、EPSG:4326Web地図・GPS・GeoJSONでよく使います。日本の公共測量成果とは厳密には同じ扱いではありません。

「JGD2011の緯度経度」はEPSG:6668、「WGS84の緯度経度」はEPSG:4326です。両者は実用上ほぼ重なる場面もありますが、公共測量や高精度な土木・防災GISでは、データの出典に合わせてCRSを明確に指定します。

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JGD2011でよく使う座標参照系一覧

JGD2011は、現在の日本国内データでよく使われる測地系です。GIS実務では、まず緯度経度の EPSG:6668、 平面直角座標系の EPSG:6669〜6687、UTM座標系の EPSG:6688〜6692 を覚えておくと、QGIS、PostGIS、GDAL、WebGIS連携で迷いにくくなります。

分類EPSG名称座標の単位主な用途リンク
地理座標系6668JGD2011日本国内データの緯度・経度、データ配布、広域データ管理EPSG.io
平面直角座標系6669〜6687JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS I〜XIXメートル公共測量、都市計画、河川・砂防、防災GIS、距離・面積・バッファ解析一覧表へ
UTM座標系6688JGD2011 / UTM zone 51Nメートル日本西端側・広域データ、衛星画像、ラスタデータ処理EPSG.io
UTM座標系6689JGD2011 / UTM zone 52Nメートル九州・中国地方周辺など、UTM 52Nに入る広域データEPSG.io
UTM座標系6690JGD2011 / UTM zone 53Nメートル近畿・中部地方周辺など、UTM 53Nに入る広域データEPSG.io
UTM座標系6691JGD2011 / UTM zone 54Nメートル関東・東北・北海道南部周辺など、UTM 54Nに入る広域データEPSG.io
UTM座標系6692JGD2011 / UTM zone 55Nメートル北海道東部・日本東端側など、UTM 55Nに入る広域データEPSG.io
使い分け:配布・保存が緯度経度ならJGD2011 EPSG:6668、国内の距離・面積解析なら対象地域に合う平面直角座標系、 広域ラスタや衛星画像ではUTM座標系を検討します。Web地図表示ではWGS84 EPSG:4326やWebメルカトル EPSG:3857も併用されます。
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日本の平面直角座標系とは

平面直角座標系は、日本国内の大縮尺地図、公共測量、土木設計、都市計画、河川・砂防・防災GISなどでよく使われるメートル単位の投影座標系です。日本全国を19の区域に分け、各区域ごとに原点となる緯度・経度を定めています。

  • 単位がメートルなので、距離・面積・バッファ・標高メッシュ解析に使いやすい。
  • 日本国内の狭い範囲・中縮尺から大縮尺の実務に向く。
  • 対象地域に合わない系を使うと、座標値や解析結果に歪み・誤差が出やすい。
  • JGD2011では、I系からXIX系までEPSG:6669〜EPSG:6687が割り当てられています。
軸の注意:平面直角座標系の定義では、X軸は真北方向を正、Y軸は真東方向を正とします。一方、GISソフトの画面や属性表では、一般的なEasting/Northing表記やX/Y表記と混ざって見えることがあります。外部システムへ渡すときは、軸順序と単位を確認します。
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日本の平面直角座標系 一覧表

日本の平面直角座標系は、公共測量や土木・防災GISで使いやすいように、日本全国を19の区域に分けた投影座標系です。JGD2011ではI系〜XIX系に EPSG:6669〜6687 が割り当てられています。

この表の使い方:対象地域の系番号を確認し、QGISでは EPSG:6677 のようにEPSGコードで検索します。厳密な適用区域や境界付近の判断は、国土地理院の平面直角座標系ページ・国土交通省告示・発注者仕様書を優先してください。
系番号JGD2011 EPSG座標系名原点経度原点緯度主な対象地域・メモ
IEPSG:6669JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS I129°30′E33°00′N長崎県、鹿児島県の一部離島など。九州西側・南西諸島の一部。
IIEPSG:6670JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS II131°00′E33°00′N福岡、佐賀、熊本、大分、宮崎、鹿児島の多く。九州本土側でよく使います。
IIIEPSG:6671JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS III132°10′E36°00′N山口、島根、広島。中国地方西部。
IVEPSG:6672JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS IV133°30′E33°00′N香川、愛媛、徳島、高知。四国。
VEPSG:6673JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS V134°20′E36°00′N兵庫、鳥取、岡山。中国地方東部・兵庫。
VIEPSG:6674JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VI136°00′E36°00′N京都、大阪、福井、滋賀、三重、奈良、和歌山。近畿周辺。
VIIEPSG:6675JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VII137°10′E36°00′N石川、富山、岐阜、愛知。北陸・中部の一部。
VIIIEPSG:6676JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VIII138°30′E36°00′N新潟、長野、山梨、静岡。中部東側。
IXEPSG:6677JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS IX139°50′E36°00′N東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、福島など。関東・首都圏で最重要。
XEPSG:6678JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS X140°50′E40°00′N青森、秋田、山形、岩手、宮城。IX系と取り違えないよう注意。
XIEPSG:6679JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XI140°15′E44°00′N北海道西部、渡島・檜山・後志など。北海道はXI〜XIIIに分かれます。
XIIEPSG:6680JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XII142°15′E44°00′N北海道中央部など。北海道の広い範囲で使います。
XIIIEPSG:6681JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XIII144°15′E44°00′N北海道東部、十勝、釧路、根室など。
XIVEPSG:6682JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XIV142°00′E26°00′N小笠原諸島の一部。東京都島しょ部。
XVEPSG:6683JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XV127°30′E26°00′N沖縄本島、久米島、慶良間列島など。沖縄本島周辺。
XVIEPSG:6684JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XVI124°00′E26°00′N宮古、石垣、西表、与那国など。先島諸島。
XVIIEPSG:6685JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XVII131°00′E26°00′N北大東島、南大東島。大東諸島。
XVIIIEPSG:6686JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XVIII136°00′E20°00′N沖ノ鳥島。特殊な島しょ区域。
XIXEPSG:6687JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS XIX154°00′E26°00′N南鳥島。特殊な島しょ区域。
よくある間違い:関東地方の平面直角座標系は通常 IX系 EPSG:6677 です。EPSG:6678X系 で、主に青森・秋田・山形・岩手・宮城などに対応します。
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EPSGコードとは

EPSGコードは、座標参照系を識別するための番号です。GISソフトやWebGIS、PostGIS、GeoServer、GDAL、PROJなどでは、座標系名を長く書く代わりに EPSG:4326 のようなコードで指定できます。

EPSG名称種類主な用途注意点
4326WGS 84地理座標系GPS、GeoJSON、Web API、Leaflet入力単位は度。距離・面積解析には直接使わない。
3857WGS 84 / Pseudo-Mercator投影座標系Google Maps、OpenStreetMap、地図タイル、WebGIS表示表示用に便利だが、精密な面積・距離解析には注意。
6668JGD2011地理座標系日本国内データの緯度経度公共測量・基盤地図情報などで重要。
6669〜6687JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS I〜XIX投影座標系日本国内の距離・面積・土木GIS解析対象地域に合う系番号を選ぶ。
4612JGD2000地理座標系少し古い日本国内データJGD2011へ合わせるか、出典に応じて管理する。

QGISでの指定例

QGISでレイヤのCRSを設定・変換するときは、検索欄に 6677JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS IX のように入力すると見つけやすくなります。

# GDAL / ogr2ogr でWGS84緯度経度からJGD2011 平面直角IX系へ変換する例
ogr2ogr -t_srs EPSG:6677 output_jgd2011_zone9.gpkg input_wgs84.geojson

# Python / pyproj でCRSを確認する例
from pyproj import CRS
crs = CRS.from_epsg(6677)
print(crs.name)
print(crs.axis_info)
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WebGISで使うWebメルカトル EPSG:3857

Google Maps、OpenStreetMap、Leaflet、OpenLayers、MapLibre GLなどのWeb地図では、背景地図タイルの表示にWebメルカトル(EPSG:3857)が広く使われます。画面上で世界中を同じタイル方式で高速に表示できるため、WebGISに向いています。

入力データはEPSG:4326が多い

GeoJSONやWeb APIでは、経度・緯度のWGS84(EPSG:4326)でデータを扱うことが多いです。Leafletでもマーカー指定は緯度・経度を使うのが基本です。

表示内部はEPSG:3857

Web地図タイルは、ズームレベル、X、Yのタイル番号で分割され、内部的にはWebメルカトル座標に基づいて描画されます。

用途おすすめCRS理由
Leafletで点・線・面を表示EPSG:4326のGeoJSONWeb APIやGeoJSONとの相性がよい。Leaflet側で背景地図に合わせて表示されます。
背景地図タイルEPSG:3857標準的なWeb地図タイルの座標系です。
距離・面積・バッファ解析地域に合う投影座標系日本ならJGD2011 平面直角座標系など。3857で精密な面積解析は避けます。
国内業務成果の保存JGD2011系公共測量・自治体・土木GISとの整合を取りやすい。
WebGISの実務メモ:「表示はEPSG:3857」「配布・APIはEPSG:4326」「解析・成果作成はJGD2011平面直角座標系」と役割を分けると、設計が分かりやすくなります。
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実務でのCRS確認・変換フロー

  1. データの出典を確認する。
    基盤地図情報、国土数値情報、自治体データ、測量成果、GPSログ、Web APIなど、どこから来たデータかを確認します。
  2. レイヤのCRSが未定義でないか確認する。
    未定義データに対して、見た目だけでCRSを決めるのは危険です。メタデータ、仕様書、付属prjファイルを確認します。
  3. 重ね合わせる基準CRSを決める。
    Web表示ならEPSG:4326または3857、国内実務解析ならJGD2011平面直角座標系を候補にします。
  4. 解析用データを再投影して保存する。
    QGISの「エクスポート」やGDALの ogr2ogr -t_srs を使い、解析用CRSへ変換したファイルを別名保存します。
  5. 成果ファイル名とメタデータにCRSを書く。
    例:river_buffer_jgd2011_6677.gpkg のように、後から分かる名前にします。
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よくある失敗と対策

レイヤが数百mずれて表示される

旧日本測地系とJGD2000/JGD2011/WGS84の混在を疑います。CRSの「定義」と「変換」を混同しないようにします。

距離や面積の値がおかしい

緯度経度のまま解析している可能性があります。距離・面積・バッファは、対象地域に合うメートル単位の投影座標系へ変換してから実行します。

QGISでは重なって見えるのに、出力するとずれる

オンザフライ変換により画面上だけ重なっている場合があります。解析・納品用には、データそのものを同じCRSへ再投影して保存します。

EPSG:6677とEPSG:6678を間違える

IX系とX系の取り違えです。関東・神奈川・東京本土は通常IX系 EPSG:6677、宮城・岩手・青森などはX系 EPSG:6678です。

参考

公式情報・確認先