GISを「電子地図」ではなく、位置情報を軸にデータを管理・分析・共有する仕組みとして説明できる
このコースでできるようになること
QGIS、ArcGIS Pro、WebGIS、防災GISへ進む前に、必ず押さえたい基礎を実務目線で整理します。
点・線・面・ラスタ・属性テーブルの違いを理解し、用途に応じて使い分けられる
地理座標系と投影座標系、JGD2011、平面直角座標系19系、EPSGコード、Webメルカトルの違いを説明できる
バッファ、クリップ、重ね合わせ、空間結合などの基本解析の考え方を理解できる
QGISやArcGIS Pro、WebGISへ進む前の前提知識を身につける
GISを一言でいうと
GISは、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持つデータを管理・加工・表示し、分析や判断に利用する仕組みです。 単に背景地図を表示するだけではなく、施設、道路、河川、行政界、標高、統計、観測値などを同じ空間上で扱えることが重要です。
管理する
行政界、道路、河川、施設、標高、統計などを、位置と属性を持つデータとして整理します。
重ねる
異なる主題のレイヤを同じ座標系で重ね、場所ごとの関係を見える化します。
分析する
距離、面積、包含、交差、近接、集計などを使い、判断材料を作ります。
共有する
地図帳、PDF、WebGIS、GeoJSONなどで、結果を関係者へわかりやすく伝えます。
日本でGISが重視される背景
国土地理院の解説では、GISは位置に関する情報を持つデータを総合的に管理・加工し、視覚的表示や高度な分析、迅速な判断を可能にする技術として説明されています。 日本では阪神・淡路大震災をきっかけに、国土空間データ基盤の整備や、地理空間情報の相互利用が重要な課題として認識されるようになりました。
そのため実務でGISを学ぶ場合は、ソフト操作だけでなく、データ仕様、出典、座標系、メタデータ、共有方法まで含めて理解することが重要です。
GISデータの基本構造
GISでは、地物の形を表す空間情報と、名称・種別・数値などを表す属性情報を組み合わせて扱います。 最初は「点・線・面・ラスタ・属性表」の5種類に分けて考えると理解しやすくなります。
| 種類 | 代表例 | 使い方 |
|---|---|---|
| 点 | 避難所、観測所、公共施設、事故発生地点 | 位置と属性を持つ最小単位。件数集計や近接解析に使う。 |
| 線 | 道路、河川、管路、鉄道、流路 | 延長、交差、ネットワーク、流下方向などを扱う。 |
| 面 | 行政界、用途地域、浸水区域、土砂災害警戒区域 | 面積、包含、重ね合わせ、区域内集計に使う。 |
| ラスタ | DEM、航空写真、衛星画像、浸水深グリッド | セルごとの値を持ち、地形解析や画像解析に使う。 |
| 属性表 | 名称、種別、住所、人口、延長、更新日 | 地物の意味や数値を管理し、検索・集計・分類表示に使う。 |
ベクタは地物を形として扱い、ラスタはセルごとの値として扱います。用途に応じた使い分けがGISの第一歩です。
座標系・測地系は最初に確認する
GISで複数のレイヤを重ねるには、各データがどの座標参照系で作られているかを確認します。 緯度経度は世界的な位置の表現に向いていますが、距離や面積をメートル単位で扱う解析では、投影座標系を使うことが一般的です。
緯度経度
単位は度。Web地図やGPSの位置表現でよく使われます。距離・面積解析では注意が必要です。
平面直角座標系
単位はメートル。日本の測量・設計・防災GISなど、実務の距離・面積計算に向いています。
代表的なデータ形式
学習サイトでは、実務データ管理の基本形式としてGeoPackageを中心にし、Web公開ではGeoJSON、ラスタ教材ではGeoTIFFを扱う構成にします。
| 形式 | 拡張子 | 学習上の位置づけ |
|---|---|---|
| GeoPackage | .gpkg | 複数レイヤを1ファイルにまとめやすく、QGISやArcGIS Proでの実務データ管理に向く。 |
| Shapefile | .shp ほか | 古くから使われるが、文字コード・フィールド名長・複数ファイル管理に注意。 |
| GeoJSON | .geojson | WebGISやAPI連携に使いやすい。大量データではサイズに注意。 |
| GeoTIFF | .tif | DEM、衛星画像、解析結果グリッドなどの位置付きラスタに使う。 |
| CSV | .csv | 緯度経度や住所を持つ表データの入口。GIS化には座標列やジオコーディングが必要。 |
最初に覚える空間解析
バッファ
施設から500m圏、河川から30m範囲など、距離にもとづく影響圏を作ります。
クリップ
対象市町村の範囲だけに道路や人口メッシュを切り出します。
重ね合わせ
浸水区域と建物、土砂災害区域と道路など、複数レイヤの関係を確認します。
空間結合
区域内の点数、道路延長、人口、浸水面積などを属性として集計します。
実務で必ず確認するチェックリスト
- 座標系が未設定ではないか。複数レイヤを重ねる前にCRSを確認する。
- 単位が度なのかメートルなのかを確認する。距離・面積解析では特に重要。
- 属性名、文字コード、NULL値、重複ID、日付形式を確認する。
- データの作成日、出典、縮尺、位置精度、利用条件を記録する。
- 解析後の成果物には、凡例、縮尺、方位、出典、作成日を明記する。
GIS入門の章立て
よくある質問
GISと普通の地図の違いは?
普通の地図は場所を読むための表現が中心ですが、GISは位置情報と属性情報をデータとして扱い、検索・重ね合わせ・集計・解析まで行える点が大きな違いです。
最初に学ぶべきソフトは?
無料で始めやすく、教材も多いQGISが最初の学習に向いています。業務でArcGIS Proを使う場合でも、GISの基本概念は共通です。
座標系はなぜ重要?
距離や面積を計算する場合、緯度経度のままでは単位が度になるため、結果の意味を誤ることがあります。日本の実務では平面直角座標系などの投影座標系を確認します。
防災GISでは何が大事?
データの鮮度、出典、縮尺、位置精度、凡例表現、避難行動につながる読みやすさが重要です。